ラストオーダーに見る政治的思想

作者の木城先生がGIGAZINEインタビューにて、無印版銃夢の時も、多少なり政治や社会のネタは入れていた、30代の時はそれが一番強かった的な事を述べていた気がします。
ラストオーダー連載中は、丁度作者が30代の時で、政治・社会ネタが一番強かった時期と重なります。
連載最初期9.11が起きて、作者さんはサイトのブログで滅茶苦茶キレていたの覚えています。
ブッシュジュニアめ、俺の誕生日に報復攻撃始めやがって!ってそっちかーい!みたいな。
とある話のタイトルページでは、「NO MORE WAR!」と書かれた生首が描かれていた時もありましたし(ちょうどその頃9.11があった時期と近い)。

確かに今読み返してみれば、ラストオーダーってめっちゃ革命!自由!民衆!女性!な、ゴリゴリの左翼思想なんですよ。
最終的にイェール政権を崩壊させて、地球政府を改革してしまいますので。
更に、女性の権利面でも露骨にアピールしています。
ラストオーダーにて、太陽系社会は王室議会派と地球の地上と、治外法権の小惑星地帯を除いて出生が犯罪と化していて、子供と女性の存在を滅茶苦茶恐れているんですね。
何故子供や若者を恐れる様になったかは、過去に若者らが、グレイ・グーというナノマシン事故を起こしてしまったからです。
要は次世代が信じられなくなったんですね、なので不老不死術で世代を固定化し、200年前のまま時が止まったんです。

しかし、最終的に子供を産めない身である女性型ロボである、機械ガリィの手によってイェール政権は崩壊し、太陽系社会の在り方も改革に向かいます。
で、更にメルキゼデクのマスターキーは二つ存在し、喪失したマスターキーの名は「エクスカリバー」で男性原理を司り、カエルラがずっと守り続けていたもう一つのマスターキーは「ファタ・モルガーナ」で、こちらは女性原理を司ります。
200年ぶりにメルキゼデクに適用されたマスターキーは、後者のファタ・モルガーナです。
これからこの世界は女性の世界になります!って事ですかね…出生禁止の太陽系社会の否定にもなりますし、うーん露骨。
そう思うと、ラストオーダーはすごくグロテスクというか、めっちゃ政治漫画やん…って。
木星連邦はロシアだし、金星共和国はEUだし、火星は日本とドイツ(敗戦国)だし。イェール政権はアメリカだし。

ですが、火星戦記となると政治色は薄くなり、何だかラストオーダーでの機械ガリィの行いを否定するような不穏な空気が漂い始めます。
革命の代償…ってやつですかね。
地球にとってはジャンヌダルクの様な存在となった機械ガリィですが、その機械ガリィは恩人である筈のリメイラ女王を殺しかけるという凶行に及んだという事になっており、信頼を失い、英雄堕つ的な展開となります。
戦記は無印に回帰した雰囲気なので、ラストオーダーから入った人からすれば、淡々とした展開で拍子抜けかもしれません。
ですが、無印版から入った身からすれば、少年ジャンプのバトル漫画なノリが10年近くも続き、政治色の強かったラストオーダーの方が異質で異様だったんですわ。

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